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【イベントレポート】"RIDE" UX Sketch SUMMER 2016 に行ってきた

こんにちは、夏休みは実家に帰省して川ではしゃいでいたデザイナーの諏訪です。今回は夏休み初日に参加した、株式会社リクルートホールディングスMedia Technology Lab.が企画・主催を行なっているUXの勉強会「”RIDE” UX Sketch SUMMER 2016」のレポートをお送りします。

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キラキラ事例はもういらない。現場のリアルな声を聞け!

今回のUX Sketchは、Summer2016と銘打っていることもあり、登壇者ひとりひとりの発表時間が通常のUX Sketchより長く、朝から晩までたっぷりお話を聞くことができました。“キラキラ事例はもういらない。現場のリアルな声を聞け!”という特設サイトのコピー通り、「UXという言葉は使わない」「UXは抽象的で伝わらない」「いろんな手法を使ったけど劇的に良くなることはない」など、本当にリアルな声だったので、UXの勉強会というよりUXという言葉に縛られず本質を見ましょう、と注意を促す会のようでした。

改めて「UX」とは

核心は同じようでやり方は多種多様な8名の登壇者の方のトークを聞き、すっかりUXというものがわからなくなってきましたので…、一度Googleでそれらしい定義を拾ってみます。

UXとは、ある製品やサービスを利用したり、消費した時に得られる体験の総体。個別の機能や使いやすさのみならず、ユーザが真にやりたいことを楽しく、心地よく実現できるかどうかを重視した概念である。UXとは – IT用語辞典

なるほどなるほど…。例えば今回のUX Sketchであれば、会場は駅から近く講演の声は聞きやすくスライドは見やすく快適な室温が保たれ座りやすい椅子で当日のアナウンスもアフターフォローも完璧で参加者は自分が求めていた内容(Webサイトを見て期待していたこと)が聞けて大満足!!…だと、UXがばっちりということになるのでしょうか。もはや行き過ぎたホスピタリティとただの贅沢にすら思えてきますね。笑

そんな「UXやりすぎでは?」というお話をしてくださった方がいらっしゃいました。

「算数とダイエットのUX」

算数とダイエットのUXという表題で話してくださったのは、予防医学研究者であり、Campus for Hの共同創業者でもある石川善樹さんです。

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家や車のエアコンが1970年代はなくても良いと思う人が多かったのに、1990年代にはどちらも必要だと思っている人の比率が上昇しているというデータから、今の人類が1990年代からはじまった“快適中毒”に陥っているという内容からはじまり、人が物事にすぐ慣れる生物であることから、今後UXはどんどん難しくなってくるというお話をしてくださいました。

不快に対する耐性をなくした現代人

過去40年間で様々な技術が進化し、暇な時間が増えた人類は、男女別に時間の使い方が以下のように変化しているというデータがあるそうです。
男性:仕事をする時間が減り、ぼーっとしたりテレビを見る時間が増えている
女性:家事をする時間が減り、仕事をしたりぼーっとする時間が増えている
→暇な時間は動いていない人が多く、結果現代人の肥満に繋がっている!

こうした結果から、現代はUXを考慮し過ぎて目先の快適さを優先するあまり、全体としての快適さ(長期的に見た場合の健康的観点)を見失っていないか?というお話でした。

サービス提供側としては利益のためにもより快適なものを提供したいし、制作側としても仕事を得るために快適さは追求したいところです。見た目のWebデザインのみで考えたら、使いやすさ(文字の読みやすさやボタンの押しやすさ色の使い方等々)を追求しても良いと思いますが、今後つくられていくサービスの内容は、人類の長期的な健康のために目先の利益に捉われない勇断が必要になりそうですね!

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次に、今回のUX Sketchの会場にもなっているイトーキ東京イノベーションセンター SYNQAのDesign Strategistである田中勇一さんから、空間を創造するという視点からのUXについてお話いただいたのでご紹介します。

「共創空間におけるUXデザイン」

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田中さんは、UXという概念がない社内でUXを広めようとした時、なかなかうまくいかなかったそうです。その結果、理論を導入するより対峙している環境に対して真摯に向き合い、広く考え抜く姿勢を植え付けることが大事だということに気付いたというお話をしてくださいました。

強く意識した「言葉」

“UX”というと抽象的で伝わらなかったところを、営業の人には「コンサルティング」、開発の人には「マーケティング」という言い方に置き換えて話したことで、自分が伝えたいことが通りやすくなったそうです。
また、UXということを自分より年上の上司に話した時には、「それは今までもやってきたことだ」と言われてしまい、その上司の言う“UXらしきもの”と、自分の言っている“UXらしきもの”の明確な違いについては、自分でも答えが出ていないということをおっしゃっていました。

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最後に、BCG Digital Ventures Experience Designer Directorの坪田朋さんのお話を紹介します。

「概念のUXデザインを現実に変えるには何が必要なのか」

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坪田さんは、UXが抽象的な言葉になっていたり、現場でミスリードやUX疲れが起こる原因と、それをどうしたら現実に変えることができるかということをお話してくださいました。また、他の登壇者の方が「UX」についてお話してくださる中、坪田さんは「UXデザイン・UXデザイナー」の働き方という点でも深くお話してくださり、個人的にとても勉強になりました。

組織でユーザー体験を追求できる体制に

組織でユーザー体験(UX)を追求できる体制になっていない現場に起こっている事情として以下のようなことが考えられ、デザイナーだけがUIUXをやるのではなく、開発チーム全体がUIUXの会話ができる状態にすることが大切であるとのことでした。
・デザイナーが社内(社外)下請けになっている
・意思決定者がプロジェクトチーム内に居ない
・プロトタイピングツール未導入
・経営者 / ステークホルダーを議論に巻き込めていない

また組織だけでなく、実際に自社でデザイン(デザイナー)に起こっていた問題と、非デザイナーに起こっていた問題があり、その課題の解決方法として実践した内容もお話してくださいました。

デザイン周りで起こっていた課題

・決まった要件にグラフィックを描く社内下請感
・理解が得られにくく、裁量が少なく環境が整わない
・何でも屋を求められて器用貧乏になる
・慢性的にリソース不足で、品質が上がらない
>工数見積で勘違いされるケース
・デザイナーの仕事(思考・調査時間5割/アウトプット時間5割)の中で思考時間が工数に組まれない
・グラフィックのアウトプット部分だけにフォーカスがあたる
・事前情報が浅いまま「明日からグラフィックつくって!」といった無茶振りが起こる

非デザイナー側で起こっていた課題

・デザインという言葉が広義なので、各職種のスキルセットがわかりにくく、プロジェクトの適切なアサインができない
・UIデザイナーといっても、設計オンリーの人と、設計でグラフィックができる人が居て、誰をアサインすればいいのかわからない
・デザインプロセスや工数感は非デザイナーから見えにくいので、リソース見積もりやアサインが曖昧なまま開発を走らせてしまう
・デザイン=絵心・センスが必要という印象が強く、なんとなく深いコミュニケーションを避けがちで距離感があり全力で会話できない
・リソース調達が必要なのは理解しているが、採用方法やスキル評価の判断基準が定まらず、アクセルを踏みきれない
>工数見積で勘違いされるケース
・デザイナーの工数はが見えにくい(わからない)

課題を踏まえ、実施したこと

・デザインを言語化し、サービスを開発する上で何ができる課題なのか非デザイナーにもわかるように説明する
・正しいリソース、工数の提示とアサインの適切化を実施して事業予算に組み込んでもらう交渉と提案をする
・デザイナーに必要なソフトウェア、開発環境を導入して、生産性を上げる
・リソースが足りなければ、採用計画を立てつつ、直近で必要な外部パートナーからリソース調達する
・メンバーのスキルセットを可視化し、得意領域・サービスステージに合わせたアサインを部署移動なく実現可能する

他にも、変化する市場に合わせてチェンジ・マネジメントが必要なことや、デザイン環境が整っていない場合はまず環境から整えたほうが生産性が上がること、優れたものを模範し、情熱を持って取り組み、何より実行することが最も大切なことなど、大変勉強になることばかりでした。

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感想

朝から晩まで8名の登壇者の方のお話を聞いたのですが、全て書くとすごいボリュームになってしまうので、3名をご紹介しました。他にも雑誌の編集者やプロダクトデザイナーの方なども登壇され、普段なかなか聞く機会のない現場のお話を聞く事ができ、大変興味深く、また勉強になりました。懇親会ではお酒とお洒落な料理をいただきながら様々な業種の方とラフに意見交換ができ、とっても充実の1日でした!