• このエントリーをはてなブックマークに追加

新規事業の成功確率を高める!「顧客開発モデル」とは?

ニジボックスでは、専門分野のメンターをお招きし、ワークショップやセミナーを積極的に開催しています。これにより、メンバーにスキルアップの機会を持ってもらい、対応領域拡大へのチャレンジにつながります。

今回は、ビジネスモデル検証をする際のメンタリングをして頂いている、ラーニング・アントレプレナーズ・ラボ 堤孝志さんが米国から輸入した

「顧客開発モデル」

をご紹介します。ニジボックスでも実際の検証にあたって実践しており、事業開発には必須のプロセスについて詳しくみっちり学びましょう! 目標は「顧客開発モデルの実践力を高め」「価値検証の質を向上させる」ことです!

ラーニング・アントレプレナーズ・ラボ 堤孝志さん
プロセス志向アクセラレーター。シリコンバレーを含む国内外VCにて20年以上にわたり一貫してリスクの高い新規事業の立ち上げ、ベンチャー投資活動を行う。顧客開発モデルを中心とした講演やレクチャーを精力的に行っており、現在では10校以上の大学で教育に携わっており、手法のインプットだけでなく、必要があれば共に新規事業開発することもいとわない。『アントレプレナーの教科書』、『スタートアップ・マニュアル』(翔泳社)、『リーン顧客開発』(オライリー・ジャパン)など多数の訳書がある。

「顧客開発モデル」は事業開発の1つの手法

まず、本題に入る前に、顧客開発モデルと関係のある新規事業開発の2つの方法について軽く押さえておきましょう。その2つの方法とは

1. プロダクト・アウト
2. マーケット・イン

プロダクト・アウトは、先に商品やサービスなどのコンセプトを決めておいて、あとからそれを必要としている顧客を見つける、という方法です。つまり、ターゲット(顧客)だと仮説した層にマッチしないことがわかったら、次の層へとターゲットを変えていく、という手法です。

マーケット・インはその逆で、先にターゲットを定めておき、そのニーズにマッチする商品やサービスを作ること。

とはいえ、実際にはサービスや商品のコンセプトはあるけれど、細部のUIやUXが定まっていないから、それについて顧客に聞いていくという、プロダクト・アウトとマーケット・インの中間に位置するケースのほうがよく見られています。

顧客開発モデルは、プロダクトを定めた上で顧客(ターゲット)を変えていくことを念頭に置いているため、プロダクト・アウトのための方法だといえます。

顧客開発モデルとは?

これは、Steve Blank(スティーブ・ブランク)が提唱している新規事業開発のための手法の1つ。新規事業開発では、プロダクト開発の進捗状況だけに目が行きがちで、そのため完成しても顧客がいない、という失敗が生じがちです。

そこで、プロダクトの開発をしながら顧客やビジネスモデルの開発や検証も同時に進め、プロダクトが完成しない、顧客がいない、というリスクや失敗を避け、もしくは、小さく何度も失敗を重ねながら軌道修正を行い続けることで、最終的なビジネスの成功確率を高めるために生まれた手法なのです。

また、せっかく顧客が見つかったとしても「再現性」がなければ事業の継続は見込めません。そこで再現性を担保し、拡大可能なビジネスへと導くのもこの顧客開発モデルのメリットだといえます。つまり、「再現可能でスケーラブルなビジネスモデル」を見つけることが、顧客開発モデルのゴールというわけです。

顧客開発モデルのプロセスは以下のようなものです。

1. 顧客発見ステップ

顧客を発見すると共に、そのターゲットになりきれるほど十分理解することを意味します。これから作ろうとしているサービスや製品のコンセプト段階で構わないので、資料を作り、想定する顧客のところに行って、そのニーズがあるかどうかを聞いて検証する。そしてニーズを持っている人がどのような人たちなのかを解明するところまでが含まれます。

2. 顧客実証ステップ

「1」と同じことをしますが、サービスや製品の開発が少し進んだ状態で行います。お試し販売をしてみて、本当に売れるのかを検証する中で、顧客の有無、販売するための営業プロセスを確立していきます。あとは「1」と「2」を繰り返していけば「事業化」にまで進めることができるでしょう。

3. 顧客開拓ステップ(カスタマーリレーション)

「2」までは顧客の有無を検証してきましたが、ここからは見つかった顧客に対して「どのように売ればいいか」「どのようにリーチすればよいか」を仮説・検証しながら探るというステップになります。

4. 組織構築ステップ

「3」まで進めたら、あとは組織やチームを作って事業を本格的に拡大させていく段階となります。

顧客開発の2つのポイント

ここで注意したいポイントが。

まず、
リスク(不確実性)のある段階では大きな投資をしないこと
です。事業になるかどうかわからない段階では、なるべく早く安く済ませながら検証を進めていきます。そのため、広告を打ったり、採用をしたりというコストのかかることはこの段階では行わないようにしましょう。

次に
再現性を高めること
です。前述のように、必要とする顧客がいたとしても、再現性があるとは限りません。リーチの仕方を特定できていれば、それを繰り返すことで再現性を見い出せ、事業化にもつながります。

このように、小さくスタートしながらサイクルを繰り返していくことを「リーン・スタートアップ」といいます。

出典:「リーンスタートアップ」、Eric Ries、日経BP社

「構築」「計測」「学習」のサイクルを繰り返しながら、顧客開発モデルの4つのステップを進めていき、成功するビジネスへとつなげていくのです。

顧客開発モデルが誕生した背景とは?

顧客開発モデルは、新規事業でありがちな失敗を避け、成功確率を高めるために生まれた、と書きましたが、「ニーズがあると思うから作った」という、いわゆる新しい価値創出をしたプロダクトの90%は失敗に終わっています。作ったのに、顧客がいない、もしくはお金を払って買ってくれない、という状態ですね。

プロダクトのアイデアを思いつき、「これはいいサービス」だから、そのまま成功するだろう、というのがはじめてサービス開発をする人の陥る考え。でも実は、新たな価値創出には試行錯誤が不可欠だというのが大前提としてあるのです。この図のように、成功までの道のりは長くて遠いわけですね。

このことを知っていないと、途中でガス欠になる、または時間切れになってしまい、それが失敗につながります。

とはいえ、時間も資金も限られているのが現状。それではどうすれば繰り返す試行錯誤の中から最大限の学びを得るのか。その具体的な方法を示したのが「顧客開発モデル」というわけなんです。

「『常に新サービス開発では試行錯誤の繰り返しが必要なので、試行錯誤は早く、安く繰り返して正しい方向を見つけましょう』ということが、皆さんに学んで実践してもらいたいことの一番目です」

顧客開発モデルを使いこなす手順の原則と考えかた

原則1:仮説検証思考を持つ

仮説検証思考は、「Fail Smart」つまり、利口に失敗するために欠かせない考えです。これは「とりあえず作ればいい」という行き当たりばったり、つまり学びを得られない失敗を避け、仮説を明確に持って試し、確かめる(検証する)ことにより、学びを積み上げていくことを意味します。

仮説を持っていれば結果がはっきりしますし、失敗したとしてもどこが間違っていたのか把握でき、修正の仕方がわかるので学べる、というわけです。

そして

ステップ1:仮説構築

を踏みます。

実例を挙げます。

そのサービスが生まれる前は、名刺管理といえば、ローカルにインストールするアプリケーションが一般的。でもそれでは中小企業や営業組織など名刺管理についての困りごとがあると考えてクラウドで名刺を管理する事業開発を思い付きました。後述する価値・顧客シートのフレームワークに当てはめると、こんな感じです。

ステップ2:検証方法の検討

仮説が明確になれば、誰にヒアリングに行き、何を見せればいいのかが明確になるため、検証方法の検討ができます。

ステップ3:検証の実行

コンセプト段階では、スケッチや資料をもとに顧客インタビューを行い、実際に動くものができたら試しに売ってみて検証します。

先程の名刺管理サービスでは、卓上の回転式名刺ホルダーのようなUIを考えていましたが、それは受け入れられず、検索機能のあるもののほうが良い、ということがわかりました。理由は、名刺を確認したい場面というのは打ち合わせ先に遅れそう、などという切羽詰まった状況であることが多い、という調査結果があったからです。

ステップ4:考察

このように、検証しながら方向修正を重ねていくことで、考えていたサービスの良い面や悪い面、顧客の強いニーズについて見えてくるというわけです。

このように、仮説を立ててから最後の考察の部分で軌道修正しながらブラッシュアップしていくことが必要です。仮説が明確なら、潜在顧客のニーズとのズレも明確になり、軌道修正の精度が高まります。これを早く、安く、テンポよく回していくことで、成功に結びつくのです。

原則2:あえて絞り込む

「Fail Fast」「Fail Cheap」のための原則です。これは、アーリーアダプターを見つけてそこを狙う、ということです。

アーリーアダプターというと、何にでも早く飛びつく人、という印象があるかもしれませんが、E・ロジャーズによる『イノベーションの普及理論』では、ある製品が世の中に浸透する(メインストリームに受け入れられる)前に、買ったり使ったりしてくれる人たちのことを指します。

この人たちは、開発中のそのプロダクトに対する切実なニーズがあり、そのため必要最小限の機能しか実装されていなくても使ってくれます。

逆に、メインストリームの人たちはニーズが弱く、そのプロダクトに実績ができるまで、または機能が充実するまで様子を見る傾向にあります。そのため、「あの機能はないか」「この機能はつけないのか」とないものねだりをする。最初にこの人たちのことを顧客にしてしまうと、開発に時間とお金がかかりすぎてしまい、結局潰れてしまう、ということになりかねません。

そこで、アーリーアダプターに絞り込む、ということが大切になってくるわけです。

とはいえ、アーリーアダプターだけをいつまでも対象にしたMVPの製品だけ作っていては、事業はスケールしません。

MVPというのは、顧客の切実なニーズを過不足なく満たす必要最小限の製品のことを指します。必要最小限なので、無駄がなく、無駄がないから仮説検証時に顧客とのズレを明確にしやすい、というメリットも生まれます。

アーリーアダプター向けに、ある程度実績ができたら、メインストリームに受け入れられるプロダクトへと昇格させ、巨大市場を目指せばよいのです。

アーリーアダプターを見極めるには?

ここで出てくる疑問が、自分のプロダクトのアーリーアダプターをどのように見つければよいか、ということでしょう。

目安となるのは、切実なニーズを持っているかどうか。でも、「それを欲しい」というだけでは不十分で、なぜそれが欲しいかという動機や背景、作ろうとしているプロダクトでそのニーズを充足できるかどうかを突き詰める必要があります。

例えて言うなら、電動ドリルを必要としている人は、ドリルがあれば満足するわけではなく、それによって穴を開けたい、というニーズが背景にあります。しかも、きれいに簡単に開けたい。力のある人に頼んでみたものの、忙しいということでなかなか取り掛かってくれない。

これは、穴を開けたいという「Jobs To Be Done」があるものの、うまく開けられないという「課題不満」があり、頼むという「現状対策」をしているのに、やってくれないという「満足状況」が満たされていないことを表しています。そのような人には、「電動ドリルが欲しい」というニーズがあるわけです。やりたいこと(Jobs)があるから商品を買うというわけですね。

このような、ニーズのメカニズムに着眼できれば、誰がアーリーアダプターなのかを客観的に判断できますし、別のメリットもあります。

どういうことかというと、ニーズのメカニズムというのは、顧客側の状態だから、プロダクトがなくても確認できるということ、また客観的にJobs To Be Doneがあるのか、課題不満があるのか、現状対策がされているのかなどを確認できるため客観的にニーズの有無を判断できること、またニーズのメカニズムがどの段階(Jobs To Be Done、課題不満、現状対策、満足状況つまり不満がある状態)にあるかを図ることで、ニーズの強さもわかる、ということなんです。

また、アーリーアダプターを見極めたなら、彼らのニーズを満たすMVPの仮説を具体的に立てます。どれだけ具体的にしたかということと、アーリーアダプターの反応は比例するため、改善すべき場所がはっきりしてきます。

ただ、気をつけなければいけないのは、要望を受け入れるのはアーリーアダプターからのもののみにすることです。この段階ではメインストリームの声に付き合わないようにしておきましょう。

顧客開発モデルに欠かせない顧客インタビューのキモとは?

顧客発見のために、アーリーアダプター探しが重要だということがわかりましたが、どうすればニーズを掘り起こせるでしょうか。それには正しいインタビュー方法を身につけることが必要です。

顧客発見インタビュー

顧客発見インタビューの大きな流れは以下のとおりです。

インタビューの目的は、商品へのニーズを検証すること。それには、商品を欲しがる人がいるか、ニーズのメカニズムがあるか、そのプロダクトは顧客の要望にフィットしているか(プロダクト・マーケット・フィット)です。

また、アーリーアダプターの特徴を把握することも目的としておきたいところです。それによって、闇雲にインタビューしなくても、あらかじめどのような人に刺さるのか、というのを知ることができるからです。

インタビューの3ステップ

顧客インタビューには次の3つのステップがあります。

課題インタビューでは、ニーズのメカニズムの有無を訪ねます。このときは企画中のプロダクトの説明をしない、というのが大切。なぜかというと、プロダクトの説明をするとなんとなく欲しいような気になってしまうから。なので、相手がアーリーアダプター候補かどうかを見極めるためにニーズのメカニズムがあるかどうかだけを尋ねるようにします。

ソリューションインタビューでは、開発しているプロダクトが顧客に対してプロダクト・マーケット・フィットしているかどうか、相手がアーリーアダプターであるかどうかを確認します。

そして、忘れてはいけないのが特徴把握インタビュー
例を挙げます。ある人が、Bluetooth対応防水機能付きスピーカーを買いました。なぜそれを買ったのかというと、「お風呂で音楽を聞きたい」というジョブがあったから。なぜ聞きたいのか、というと会社主催の飲み会後に行くカラオケでうまく歌えるように練習したかったから。練習が必要なほどの曲ってなんだろう、と推測したときにとあるグループのファンだということがわかったわけです。それがわかれば、そのグループのファンである、という外形的特徴を備えた人たちに売ることができる、というわけですね。

このように、ニーズのメカニズムに因果関係がありそうなことを聞いていくことで特徴のヒントになるものが見えてくる。

そして、それを引き出すのが「5Whys」、つまり「なぜ?」の繰り返しというわけです。これは5W1Hに置き換えても良くて、理由を深掘りすることがとにかく重要とのことでした。

ここまで教えていただいたことに気をつけて、実践演習のワークショップが行われました。

その中では、
1. 最近購入したプロダクトの名前を教え合う
2. そのプロダクトのプロマネになったつもりで、なぜそれを購入したのかを想像して仮説を立てる
3. 仮説が合っていたか5Whysを駆使しながら答え合わせする


この実践では、立てた仮説が外れがちなこと、それゆえ、何度も仮説と検証のステップが必要だ、ということをよく理解することができました。

マーケット・インで顧客インタビューするには?

ここまではプロダクト・アウトでの新規事業開発について考えてきましたが、最後はマーケット・インでの顧客インタビュー方法について教えていただきました。

そのコツは、未充足のジョブと付帯状況を聞くというもの。

なぜそのジョブを満たしたいと思っているのか、その背景を探ります。

実はジョブには3種類が存在します。

とはいえ、社会的ジョブについては口に出さない人が多いため、状況証拠から推論して見つけ出す必要があります。

いずれにせよ、未充足のジョブを見つければ見つけたぶんだけこれまでにない、イノベーティブなサービスや製品につながっていくので、マーケット・インで新規事業開発をする際にはできるだけそれを見つけるようにしましょう。

また、ジョブの付帯状況、つまり背景を把握することもマーケット・インでは重要になります。

例えば、同じ「夕食を食べたい」というジョブでも、二日酔いの状態なのか、夏バテ気味なのか、軽く食べてきたのかなどによって最適な解……ここでは献立ですけれども、それが変わってきます。

特に、本当に深くまで掘り下げないと見えてこない「インサイト」の部分まで付帯状況を得られれば、全く新しい解決方法が見えてくるようになるとのこと。「意外」を発掘できるようなインタビューができるようになりたいものですね。

本日のまとめ

3時間に及ぶセミナーにより、新規事業開発を成功に導く顧客開発モデルについての理解を深めることができました。以下で、顧客開発モデルを実践するためのポイントをまとめてみました。気になるキーワードは本文を再度参照して、自分のものとしておきましょう!

顧客開発モデル=新規事業開発の手段のひとつ

新規事業開発の2つのアプローチ
①「マーケット・イン」
②「プロダクト・アウト」

→顧客開発モデルはこちらを念頭に置いて生まれた手法

顧客開発モデルが失敗しない新規事業づくりに役立つ理由

  • 開発や検証を顧客とビジネスモデルの両方で同時に進められる
  • 小さな失敗を繰り返しながら軌道修正も行い続けられるので低リスク
  • 事業の再現性を担保できる

リーン・スタートアップの心得

  • リスクのある段階で大きな投資をしないこと
  • アーリーアダプターを見つけること
  • MVPで検証
  • MVPで実績がつくれたらメインストリームにアプローチして事業をスケールさせる

アーリアダプターの見極め方

  • 「切実なニーズ」を持っているか?
  • Jobs To Be Doneを把握する
  • ニーズのメカニズムに着目する

インタビューでニーズを掘り起こす

  • 商品へのニーズを検証する
  • プロダクト・マーケット・フィットしているか
  • 5Whysを駆使する
  • 3ステップのインタビューを実践する

ニジボックスと考えるビジネスモデル検証

ニジボックスでは、ビジネスモデル検証の支援やUXデザインに関するご相談をお受けしています。相談者に寄り添い一緒に考え続ける伴走型のサービスが特徴です。ぜひ、こちらのページからお気軽にご質問下さい!