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UXデザイナーが教えるBtoBでハマりがちなUXデザインの落とし穴

前回の「職域から考えるUXデザイナーという職業」という記事で、UXデザインの概要とニジボックスの考えるUXデザイナーを定義させて頂きました。そして、今回は「学べるUXコンテンツ」第2段として、ニジボックスが先日行った、事業者様向けのセミナーの内容を一部公開致します!

今回のセミナーは富士通デザイン様のご厚意で、富士通ソリューションスクエア内にある、「FUJITSU Knowledge Integration Base PLY(プライ)」で開催させていただきました。セミナータイトルは「B to BソリューションにおけるUXデザインの要諦」と題しまして、クライアントワークでユーザー体験の最大化を目指す時の基本的な考え方から応用まで幅広くお話させて頂きました。このコンテンツが皆さんの制作活動のヒントになると嬉しいです!

UXデザインとは?

岩本卓也 プロデューサー

 エンドユーザーが、会社・サービス・製品と対話する全ての側面を網羅するのがユーザーエクスペリエンス(UX)である。―Donald Arthur Norman

これはアメリカ合衆国の認知科学者、ドナルド・アーサー・ノーマンさんの言葉です。
UX(ユーザー体験)の簡潔な定義文になっているので、UX業界でよく引用されます。

ただ表現的に、とっつきにくいというか分かりにくいですよね?
ですので、ニジボックスではこう解釈しています。

UXとは、サービスを通してステークホルダーと対話する側面である。

UXに対する定義は諸説あると思うのですが、今回はこちらでお話を進めたいと思います。

UX と UIの違い

昨今、皆さんも含め国内の企業の現場でよくあるケースとして、

「UI/UXどうにか改善しなくちゃね…。」

という会話が交わされる場面に出会うことがよくあるのではないでしょうか?

なんとなく「そうですよね~」と答えてしまいそうですが、実はUXを考える上では、このふたつの概念をそれぞれしっかりと認識しておく必要があると考えています。

整理すると、こんな感じになります。

現在サービス開発などの場面では、この「体験」の部分がとても重要視されていたりします。

では、なぜ今UXが重要だと言われているのでしょう?

UXの重要性

ここで、急にスケールが大きいお話になりますがご了承くださいませ…(汗)

もとい、UXが重要視されるのは、近代化、工業化、電子化、IT化と、
時代の変遷によって、私たちを取り巻く環境が変化するにしたがい、消費者のニーズがモノ(物質的な消費)からコト(体験に価値を見出す)へシフトしてきていることが大きな要因となっていると考えています。

体験価値の提供

「体験価値を提供する」とはどういうことなのでしょう?
モノを売る場合「足りない」、「欲しい」という、消費者のその場のニーズに従って商品を提供し、それで完了! でも、かつては良かったのかもしれませんが、そこからさらに視野をひろげ、消費者がそれを認知し、実際に購入して使い終わるまでの一連の体験プロセスを対象として価値を提供できる可能性がある。ということになると思います。

消費者が利便性や欲しいブランドを求める時代が終わり、みんなと一緒ではなく自分らしさを追求するようになってきたと言えるのではないでしょうか?

物質的には満たされつつある今の時代では、顧客の個別の課題にそった体験価値を提供することこそ大切なのではないかと考えています。

では、実際どのように体験価値を作ってゆけば良いのでしょうか? 

答えはこちらになります。

お客さんに聞く

聞き方によっては、これほど正確なフィードバックが期待できる方法はないと思います。

B to Bの場合は利用者、
B to Cの場合は消費をしてくれるお客さん

に直接聞いてみる訳ですね。

そして、重要なポイントなのですが、なるべく対面で聞くと言うこと。
しかも一回聞いて終わりではなく、何回でもしつこく聞くことです。

なぜなら、新規事業の立ち上げやサービス開発では、何度もUXを定義・設計し、検証を繰り返し、ピボット(方向修正)し続けることが大きな失敗を避け、UXやサービス成功の近道になると考えているからです。

ユーザーの話を聞かないと…?

逆に、旧来の開発スタイルである、最初にクライアントと要件定義をしてその通りに最後までつくってしまう場合は、成功するのが困難になってくると考えます。

現代はニーズが多様化し飽和状態になっており、ユーザー(層)が何を求めているのかははっきりと分からない状況です。個々が好き勝手に志向し、多様な志向性のセグメントが無数に存在する状況とも言えるでしょうか。

このような状況ですとなおさら、ターゲット層のユーザーに直接聞いてみるのが正確な答えを迅速に得るベストな方法となり、ユーザーとの対話から、サービスの対話の仕方(UX)を創ってゆくのがUXデザインを成功させる近道になります。

良いUXデザインとは?

では、良いUXデザインとは何でしょう?
ニジボックスでは、下図のようにユーザーのモチベーション(サービスを利用する動機、インサイトとも言います)、とアビリティー(サービスの使いやすさ、UI、操作性)が共に高いレベルで実現している状態と定義しています。
顧客の体験価値=モチベーションXアビリティー
UXというのはモチベーションとアビリティーが高いものである。

UXの5段階構造から考えるUXデザインの実践

中井潤 UXデザイナー

さて、ここまでのお話で、サービス開発を進めるうえでのUXデザインプロセスの重要性について、少し気になってきた方もいらっしゃるのではないでしょうか?

このセクションからは、実際にニジボックスのUXデザイナーが現在行なっているプロセスを具体的にご紹介していきます。

まずは、こちらの概念図をご覧ください。

UX業界で知らない人はいないはず、のアメリカのUX専門家Jesse James Garrettさんの提唱している、UX(ユーザー体験)を五段階のレイヤー構造として整理したものです。
※UX界の巨人ジェームズさんについては、こちらのオフィシャルサイトをご参照下さい。
iig.net http://www.jjg.net/ia/
http://www.jjg.net/elements/translations/elements_jp.pdf

縦軸がAbstract(抽象)Concrete(具象)を表していて、

・strategy(戦略)
・scope(要件)
・structure(情報構造)
・skelton(ワイヤーフレーム)
・surface(表面、見える部分、デザイン)

が、それぞれ積み重なるように構造化しています。

サービスを作るときには、基本としてこの5段階の要素をしっかりと設計することでユーザーに求められるものにできると考えています。

図が3次元の構造物のように描かれているのには意味があります。基礎の部分にあたる「strategy」がしっかりと作られていないと、土台の弱い脆い構造になってしまう、ということですね。

B to Bの落し穴

B to Bの企業が陥りがちな点として、
クライアントの要望を言われるままに100%実装してしまう。ということがあります。

要望だからと盲目的に機能を盛り込んでいった結果として、出来上がるアウトプットが
多機能すぎるいびつな十得ナイフのようになってしまい、
ユーザーにとって、非常に使いづらいものになってしまいます。

UX5段階モデルの「strategy」の部分、戦略構築がきちんと出来ていない為、全体として崩壊してしまうわけですね。

では、UXの設計で大切な土台となる「strategy」についてもう少し詳しく見ていきましょう。
有効な戦略を設計するためには、次の2つの概念をとりいれるとぐんとわかりやすくなると思います。

UXタイムスパン

UX白書(http://site.hcdvalue.org/docs)で提唱され、UXを「利用前」「利用中」「利用後」「利用時間全体」の4つの期間で捉える考え方。

UXタイムライン

btrax(https://blog.btrax.com/jp/ux-business/)が提唱する、利用中にユーザーが感じる体験全てをUXの構成要素とする考え方。

ニジボックスのUXデザインプロセスでは、この2つの概念を組み合わせて考えることで、

どうしても目が行きがちになってしまう「Product」の部分と「予期的UX」「エピソード的UX」利用前後のユーザー体験までバランス良く注意を払うことができます。

こちらのUXの時間軸の中で、B to B企業が気をつけなければならないポイントは、「決裁者」「導入検討者」「利用者」など複数のステークホルダーがいる中で観点が錯綜し、「誰のためのUXなのか?」が分からなくなってしまいがちな点です。

そんな中で作られたサービスは必然的にとても使いにくいものとなってしまいますので、ステークホルダーそれぞれの観点でのユーザー体験をしっかりと設計する必要があるということです。

このことを分かりやすく図にしてみました。

サービスが検討され利用される時間の流れの中で。ユーザー体験をする人物が変わっているのがお分かりになると思います。

例えばよくあるケースとして、

to Bの対面営業で「Marketing」「Channel」の部分で「決裁者」「導入検討者」をターゲットに営業を行い、そこでの要望を100%実現するサービスを作ったとしましょう、
Productを実際に体験する「利用者」という目線が無いまま作られていますので、結果としてユーザーにとってはとても使いづらいサービスになってしまうことがあります。

このことから、
ユーザーの声を拾いあげながら(対話しながら)サービスを立ち上げるのがとても大切だということがわかります。

対話=UX

実際にユーザーの声を聞く方法としてニジボックスでは2つの手法を導入しています。

・ユーザーインタビュー
・ユーザーテスト

ユーザーインタビューの特徴
・ユーザーの潜在ニーズを発見できる
・ターゲットユーザーがより明確になる
・開発者間でユーザーの共有ができ、機能開発のブレがなくなる

注意点
意見はどんどん集まるが根本解決に至らないことが多いので、ユーザーの潜在的なニーズを引き出すために、入念な質問設計や聞き方を工夫(コミュニケーションスキル)することが重要になります。

ケースごとの実施方法

サービス立ち上げ段階のインタビュー
あらかじめこちら側で想定課題を洗い出し、その課題を1つずつ紙に書き出しカード化。回答者に優先度順に並べ替えてもらい、それを元にインタビューを行って課題を特定します。さらに、そこから深掘りしてインサイトを抽出します。

既存サービス改善時のインタビュー
・自社サービス導入企業へのインタビューを行い、「なぜ、他社を選ばなかったのか?」を質問することによって自分たちでは気づいていない強みの発見につながり、「現状の不満点」を聞くことで改善点を抽出することが出来ます。
・他社サービス導入企業へのインタビューを行い、「なぜ他社サービスを入れたのか」「導入までの経緯」を聞くことでサービス改善に結びつけることが可能です。

ユーザーテストの特徴

ユーザーテストの実施

ユーザーテストは、対面で実施。
モデレーターがユーザーの行動を観察し、追加質問などを行うことで、
より詳しいユーザーの心理や行動を調査することが可能。

なぜユーザーテストが必要なのか?

理由①
ユーザーテストでしか原因までを特定出来ない。

理由②
ユーザーが実際にサービスを上手く使えずに困っている場面を動画などで見せることで、クライアントへ課題提案する際の説得力となる。

ニジボックスがお勧めするUXデザインをミニマムで始める方法

UXデザインの経験がない方やクライアントに対して最初におすすめしているのは、ユーザーテストと簡易インタビューの実施です。

理由としては、サービス利用中のUXのみになるが、安価で手軽に改善点の抽出が可能なことと、既存のサービスや業務に変更を加えずに対応が可能だからです。

ユーザーインタビューとユーザーテストによってモチベーション(動機づけ)アビリティ(理解のしやすさ)を上げてゆくことで良いUXを実現し、「良いプロダクト」を目指すことができます。

既存事業やサービスに利用者目線をすぐに取り入れてサービス改善ができるのがユーザーインタビュー・ユーザーテストの良いところです。

ニジボックスのフレームワークをご紹介!

ニジボックスではビジネスステージを4つのフェーズに分割してフレームワーク化しています。

クライアントのビジネスが現在どのフェーズなのか? を見極め、それぞれの段階で事業の成長に有効と考えられる施策を実施し支援しています。

アイデアの種を見つけるところから、ユーザー調査、ペルソナの設計を行い、MVPでビジネスモデル検証、カスタマージャーニーマップを作り、リリース後もグロースハックを行い、クライアントのビジネスに寄り添いながらサポートしています。

詳細はこちらで詳しくご説明しています。
https://nijibox.jp/service/ux/

よくあるtoBの受託開発のパターンとして、受注タイミングの問題からカスタマージャーニーマップから作るというケースが多いのですが、ユーザー体験を最適化するという観点からは、
必ず、「まず、ユーザーの声を聞く」というプロセスに再度戻り、実際に意見を聞いて課題の洗い出しを行い、何度も検証を繰り返してゆくことが大切だと考えます。

まとめ

顧客の求める体験価値をいかに創り出し、提供できるか?

そのためには、まず顧客・ユーザーと「対話」すること、それもできうる限り何度でも行うことが最重要です。冒頭でも述べていますが、本当に大切なことなので念押しさせていただきました。

ユーザーの意見を聞き、何度も定義・設計し検証を繰り返し、細かい方向修正や改善を重ねてゆくことがユーザーの体験価値を上げ、結果としてサービスを成功させる近道になります。

「FUJITSU Knowledge Integration Base PLY(プライ)」

今回、セミナー開催をご快諾くださった、富士通の共創スペースPLY(プライと読みます)を改めてご紹介!富士通グループが社外との共創を実践する場として開設以来、デザイン思考やリーンスタートアップの実戦プログラムや、ハッカソンやワークショップなど、イノベーション創出を期待させる試みが日々行われています。一般参加がOKなイベントも行われているようですので、興味のある方は是非!(写真のクリックで公式サイトに飛びます)